アジャイル宣言を翻訳してみる

@Panda_Program

アジャイル開発宣言の訳を見直す

アジャイル開発の手法はよく取り沙汰される。スクラムやエクストリームプログラミング(XP)がそれだ。

しかし、チームでスクラムガイドやXP本を読んでも、アジャイルソフトウェア開発宣言にまで立ち返ることは現場の開発者はあまりしないのではないか。

「アジャイルについてよく知らない」と優秀なソフトウェアエンジニアの友人が言っていた。彼は誰もが知っているIT企業に勤めており、現場ではリーダーを任されている。アジャイルの精神が当たり前になったので、あえて読まれないのだろうか。

せっかくなので、アジャイル宣言の全文を記載する。原文も訳文もとても短い。

私たちは、ソフトウェア開発の実践 あるいは実践を手助けをする活動を通じて、 よりよい開発方法を見つけだそうとしている。 この活動を通して、私たちは以下の価値に至った。

プロセスやツールよりも個人と対話を、 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、 契約交渉よりも顧客との協調を、 計画に従うことよりも変化への対応を、

価値とする。すなわち、左記のことがらに価値があることを 認めながらも、私たちは右記のことがらにより価値をおく。

「アジャイルソフトウェア開発宣言」(https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html

別の翻訳について

そんなことを思っていたある日、Twitter のタイムラインで、日本語だと原文のニュアンスが失われているのではないかと指摘するツイートを見かけた(*1)。

増田さんのツイート

確かに定訳というものはあれど翻訳は自由だ。自分で訳出してもいいだろう。そこまでするのでなければ定訳に対して注をつけてもいい。

そこでアジャイル宣言を自分も翻訳してみようと考えてみた。同じことを既にいろんな人がやっていることと思う。ただし、原文はシンプルなのでアレンジの幅は狭い。そこで日本語らしくなるように副詞を追加してみた。

ただし、原文のニュアンスから外れないように、アジャイル宣言の背後にある原則「アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方」(IPA) を参照している。

なお、書いているのは「XよりもYを」が四行続く部分だ。

マイルドな翻訳

プロセスやツールよりも、個々人と相互交流を
網羅的なドキュメントよりも、ちゃんと動くソフトウェアを
契約交渉より、顧客と一緒になって働くことを
計画に従うよりも、変化に柔軟に対応することを

1行目はコミュニケーション、2行目は成果物は使えるソフトウェアとすること、3行目は協働を指している。

3行目について、元の翻訳では Customer collaboration が「顧客との協調」とされている。collaboration の動詞の collaborate は col-labor-ate に分解できる。col(com)が「共に」、labor が「労働」なので「お客さんと一緒に働く」というニュアンスが伝わる訳良い。

4行目はいわゆるウォーターフォールのことを指しているのだろう。実際、「アジャイル宣言の背後にある原則」では「開発の後期であっても変更を歓迎する」とか「変化を味方につけて顧客の競争優位に役立てる」と書いている。

超訳

数年ほど前、難解でとっつきにくい古典からそのエッセンスを抜き出して読者の理解を促すことに重点を置く「超訳本」が多数出版されていた(超訳 論語など)。

自分も真似をしてみて、もっと砕けたいわゆる会社文体の超訳も用意してみた。ただ、こちらはあまり参考にならないかもしれない。

手順や仕事のための道具よりも、個々別々の人同士が密に連携することを
あらゆる仕様が記された重厚な文書よりも、ちゃんと動いて役に立つソフトウェアを
バチバチの契約交渉よりも、お客様と共に汗を流すことを
事前の精密な段取りよりも、未知の変化を味方につけることを

もちろん、左と右のどちらにも価値はある。

まとめ

なお、アジャイル開発宣言は、IPA の資料の4ページ目「『アジャイルソフトウェア開発宣言』に対する誤解と真意」と一緒に読むとさらに多くのことを理解できるだろう。

アジャイルソフトウェア開発宣言で伝えようとしていることは、まずマインドセットがあって、そのうえで「プロセスやツール、ドキュメント、契約、計画」を考えるべきである、ということなのです。このマインドセットは、「個人と対話、動くソフトウェア、顧客との協調、変化への対応」として簡潔に表現されていますが、後述の「原則」を踏まえてもう少し具体的に表すと、次のようなことを示しています。

• 「対面コミュニケーション」 個人同士の対話を通じて相互理解を深めることで、よりよいチームが作られる。

• 「実働検証」 動くソフトウェアを使って繰り返し素早く仮説検証をし、その結果から学ぶことがよりよい成果を生み出す。

• 「顧客とのWin-Win関係」 お互いの立場を超えて協働することにより、よりよい成果と仕事のやり方を作ることができる。

• 「変化を味方に」 顧客のニーズやビジネス市場の変化は事前計画を狂わす脅威ではなく、よりよい成果を生み出す機会と捉える。

IPA 「アジャイルソフトウェア開発宣言の読みとき方」 2020年2月

アジャイルソフトウェア開発宣言の読み合わせをチームでするときは、ぜひこの資料を使って補足すると誤解は減るだろう。もしも「アジャイル開発だからドキュメントは書かないのだ」という主張を聞いたら、「それはアジャイルの精神に背いている」とキッパリ否定してほしい。

1: https://twitter.com/masuda220/status/1555126706486226944

Happy Coding 🎉

パンダのイラスト
パンダ

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